腸内細菌

日本国内で腸内環境が悪化し始めたのは食の欧米化が最初かと思います。
それはやっぱり第二次世界大戦後になるでしょう。
それ以前の日本では精米技術が発達し白米の流通と共に脚気(かっけ)が流行していました。
脚気は日本の国民病と言われるくらいで江戸時代から明治、大正、昭和まで多くの国民の命を奪っていたようです。

今でもご飯のおともなんて言われてますが少ないおかずで大量の白米を食べていたせいで脚気は流行しました。
脚気の原因はビタミンB1不足で細胞がブドウ糖から多くのエネルギーを生み出すにはビタミンB1が必要だからです。
白米にはブドウ糖に分解される糖質はたくさん含まれますがビタミンB1はそれと比較して少なすぎる。

戦後の高度経済成長により食材の流通や所得の向上で白米だけでなく肉や野菜、果物などが手軽に手に入るようになり栄養価の高い食事で次第に脚気は過去のものとなりました。
今でもテレビCMのあるアリナミン脚気を克服するために開発されたもので脚気撲滅の一助となりました。
しかしインスタント麺の発明と普及により脚気になる人が続出する事態もあり、それ以来インスタント麺には必ずビタミンB1が添加されるようになりました。

さて腸内環境の方は発酵食品である味噌や醤油などの伝統調味料や漬け物などが工場生産により本来の機能が低下したと思われ影響を受けたことでしょう。
ミネラルを取り除いた精製塩や砂糖の大量消費、化学調味料食品添加物
昔の食糧難の時代を抜け出したと思ったら本来の食事とは別の何かに変わってしまったのかもしれません。

野菜にしても農薬使用が当たり前になり化学肥料により土地も痩せて、畜産や養殖も病気を防ぐための薬物が、と言った感じで知らない間に栄養素が少なく毒素が多い食生活になっているかもしれません。
医学が発達してるのに病気が増えてるのはなぜ?を考えるとそこらへんも要因としてあると思います。

1993年に平成の米騒動と言うのがありましたがそれを境に日本の米事情は変化しました。
以前はブランド米であるコシヒカリササニシキが人気を二分してましたが冷害に弱いササニシキはそれ以降作られなくなります。
ササニシキコシヒカリに比べアミロースが多く、その分血糖値の上昇を緩やかにして腸内環境を整えるはず。
それ以来コシヒカリを主体とした新米が多く開発され流通するようになりました。

ササニシキコシヒカリとのアミロース含有率は20%と15%の違いなだけなので大したものではなさそうですが。
ちなみにミルキークイーンだと10%もち米0%です。
しかし日本人が毎日食べている米の違いが大きな違いを生み出したのかもしれません。
この頃から花粉症が増加し話題になり始めます。
腸内環境の悪化が花粉症やその他多くのアレルギー疾患の要因だと考えています。

病原性大腸菌o157が国内で猛威を振るったのは1996年でした。
除菌製剤が流行し始めたのはこの後だろうと思います。
除菌殺菌を前面にしての製品CMはそれ以来あたり前となり生活用品に欠かせないものとなりました。
食中毒には注意した方がいいですが行き過ぎた除菌殺菌は小児白血病の原因になるようです。
In Deepの記事をリンクしておきます。

(「過度に清潔な環境が子どもの白血病のほとんど(99%)を作り出している」ことが判明 : 私たちはそろそろこの「過剰殺菌社会は異常」だと気づかないと、子どもたちが誰も助からなくなる
https://indeep.jp/ultra-clean-homes-could-trigger-childhood-illness/)

抗生物質の乱用が問題視され始めたのがいつ頃なのかわかりませんが抗生物質は患者が欲しがるから、出すと安心するから、と言う理由でたくさん処方されていたようです。
耐性菌が出現するので問題とされていますが腸内環境破壊の要因としても抗生物質最強だと思います。

抗生物質は腸内細菌も殺すわけですが他の医薬品も腸内フローラにどのような影響を及ぼすのかわかりません。
市販薬の添付書類にはたくさんの副作用が書かれてますが腸内の特定の細菌を活発化させるために引き起こされる症状などもあるのかもしれません。
腸内細菌は種類も数も膨大で、その組成には個人の差異がかなりあるようです。
腸内細菌が関係してるとすれば副作用が出たり出なかったりがあるのもうなずけます。

腸管免疫は人体の免疫の要ですが腸内細菌のバランスがその機能を左右しています。
人体には腸内だけでなく皮膚にも常在菌が存在しています。
それらの常在菌は危険な細菌やウイルスなどから人体を守るためのバリアの働きをしていると言われてます。
幼い頃に多様な細菌と触れあうことで免疫を強化し様々な常在菌がバランスを取り合うことで健康維持に役立っているようです。

はっきり言って今の状況はとっても恐ろしい。
ウイルスを恐れるあまりウイルス感染の手伝いをしているように思います。
その影響が新種の風邪をひくだけならいいですが他の感染症も招きかねない。
常在菌に守られていたなら何でもない細菌が突然増殖して今までにない感染症が引き起こされるかもと想像してしまいます。

抗生物質の乱用により耐性菌が出現したように殺菌除菌、消毒の過剰によりそれらの薬剤が効かない菌が生み出されてもおかしくありません。
自然界のバランスを崩すことが人間の生存も困難にさせるのは自明です。
自然環境の破壊が叫ばれていますが、それは動植物や昆虫類などの生態系だけでなくウイルスや細菌でも同じだと思います。

腸内細菌の考え方に善玉菌、悪玉菌、日和見菌なんてのがあります。
細菌自体には善悪なんてありませんから人間側から見た善悪でしかないんですが、それって人間社会と似てるなと思います。
悪玉菌が優勢になると日和見菌が悪玉に加勢して腸内環境が悪化する。
善玉菌が優勢だと日和見菌は善玉の働きを助けて腸内が整う。

世界のリーダーたちが悪玉菌なら我々日和見菌は普通に生活しているだけで彼らを支援する事になるんでしょう。
単に善玉菌が増加すれば逆転するわけですが。
最近思うのは最近と細菌はなぜ発音が同じなんだろうかとか。
最も身近にあるものが意外に重要で見落とされているからかもね。
みたいな。